■
精神科の先生
イライラするのは・・若いからですね 「うつ病です」という四十六歳の女性に同行して、精神科の病院を訪ねた。心療内科というのだそうだが、待合室に想像以上にたくさんの人がいて驚いた。元気そうに見えるこの人にどんな悩みがあるのだろうか。 やがて名前を呼ばれ診察を受けることになった。私は付き添いだが、先生の配慮で入室し、彼女から斜め前に座った。 「どうされましたか」 「・・私、最近、イライラするものです」 「そうですか、イライラするのですか、・・・それはね、脳が活性化しているからですね。若いからですね」 その時です。うつむいていた彼女が顔を上げて、ふっと微笑んだのです。 彼女は私が自動車に乗せて病院に来るまで、ほとんど口を開かず、問いにもほぼ無言であった。その彼女が、医師の一言で笑ったのです。驚きました。 仏様の解決方法 物事を解決するにはいろいろな方法があります。お釈迦さまは四諦(したい)という方法を示されています。四つの諦め(あきらめ)というのですが、諦めは、飽きてしまう、達成をあきらめてしまうではなく、明らかにするという意味です。
四つの諦めとは、 @苦 諦 ・・くたい 現実を確かめなさい。なかなか思うようになりませんね。 A集 諦・・じったい(しゅうたい) 原因は何でしょうか。欲ですか。 B滅 諦 ・・めったい 悪因を除きましょう。 C道 諦・・どうたい 健全な状態を維持しましよう。 この四つのことで、私はよく話しています。 ところが、この精神科の先生の対応を見てとても反省しました。 もし彼女が「イライラする」と私に訴えたら、どう対応するだろうか。 まず、「どうして?」とか、「何があったの?」と問うだろう。結果は、彼女は一層口を閉じ、こちらがイライラしてしまう。振り返ってみればそんな対応ばかりしていないだろうか。 精神科の先生は、まず彼女の実情を認められた。 「そうなの、イライラするのね。それは脳がね・・」 ここで先生は原因を追究されていない。まず、現況の確認である。これで彼女は口を開いた。 つまり、私は、第一段階の苦諦を飛ばしてAの集諦から問うている。これでは解決しない。「お釈迦様の解決方法」などと人に話していても、一番理解していないのが自分だった。 ノート一つの診察室 精神科の先生の机の上は、ノートと筆記具だけだった。もちろん、周りには医学書などが置かれているが、聴診器もメスもない。が、見事に心を開かれた。 医学生が最初に学び、最後に学ぶものは精神科と聞いたことがある。人は言葉で生きていると思った。
日時 2019年11月03日 23:03 |
分類項目:
和尚のひとりごと |
固定リンク(この記事のURL)
|
|
|
曹洞宗 島田地蔵寺 |
日別の過去記事
先月
2019年11月
翌月
Su |
Mo |
Tu |
We |
Th |
Fr |
Sa |
|
|
|
|
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
18 |
19 |
20 |
21 |
22 |
23 |
24 |
25 |
26 |
27 |
28 |
29 |
30 |
|
|