和尚のひとりごと

曹洞宗 島田地蔵寺 「和尚のひとりごと」です。
一番短くて ありがたいお経

 この夏の盆施食会法要が一段落した時に、喜寿は越されたと思われる妙齢のご婦人から
 「和尚さん、お経が読める皆さんはいいですね。私は、「般若心経」を読みたいのですが、声が続きません。仏壇の前で、ただ、手を合わせるだけで主人に申し訳ないような気がします」
 と言われた。そのお気持ちがうれしくて、とっさに、
「一番短くて、一番有り難いお経を教えてあげるね」
 と言って、
「仏壇で手を合わせてね『あなた、愛しています』と言えばいいの」
 と伝えた。びっくりした顔をされた。
 「愛してます」という言葉は、外国映画ではよく耳にする。日常語のようで、「アメリカでは夫は妻に一日に三度以上言わないと離婚される」とまことしやかに聞かされたこともある。が、令和の世になっても昭和生まれには、まだまだ遠い言葉です。
 ご婦人は少し困った顔をされたが、
 「一番短くて一番ご主人が喜ぶよ」
   と押し付けてしまった。

 「南無阿弥陀仏」も
    仏さまの世界を体感する

 一番短いお経と言えば、「南無阿弥陀仏」が浮かびます。阿弥陀様は浄土門での仏様。極楽往生を願う仏様です。「南無」は古代インド語の敬意、尊敬を表す「ナモ」の音写で、現代インドの挨拶語「ナマステ」につながる言われます。「南無阿弥陀仏」は阿弥陀様を尊敬しますという言葉なのです。阿弥陀には無量の光、無量の寿命という意味があります。この地蔵寺は禅宗の寺ですが、本尊様は無量寿如来として伝わっています。つまり本尊様は「阿弥陀様」です。
 
 「南無阿弥陀仏」は信仰的には「阿弥陀様、救って下さい」という理解でいいと思います。そして、その信心は仏様の「任せなさい、必ず救うぞ」という声を聞くまで深化させねばならないとも言われます。
 同じく短い唱題に「南無妙法蓮華経」があります。これも人間の唱題に仏が唱和し、交差するところに仏の世界があるという説明を聞いたことがあります。
「南無阿弥陀仏」「南無妙法蓮華経」を朝の挨拶の「おはよう」と同義としては勿体ないが、「おはよう」と声を掛けると、「あっ、おはよう」と反応があればうれしい。「ありかとう」でもいい。「ありがとう」と礼を言う、「どういたしまして」で嬉しくなる。ここに仏の世界が現れているからです。
 さて、供養とは、亡き人、仏様が喜ぶことをすることです。仏壇のご主人は「仏様」として祀られているから、般若心経がいいかもしれない。しかし、奥様にはいつもニコニコする人間のご主人が見えているに違いない。困った顔をして心配はさせたくない。一番喜ぶのは「あなた、今も大切に思っていますよ」の愛語。これが何よりの読経と思うのです。

 ・・・・「愛してます」はこのご婦人には少し過激だったかもしれない。が、  今頃、きっとつぶやかれている・・・ような気がします。           2022. 秋彼岸


日時 2022年08月31日 11:21 | 分類項目: 和尚のひとりごと | 固定リンク(この記事のURL)


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